カーボンファイバーって本当に高性能?

 

受注品製作の合間にDuranty-203用20cmウーファーの改良実験を進めておりますが、Jupiter-132の実験用ユニットの余りがあるので、これを弄り倒して、予備実験(写真↑)をやっています。

例によってコーンネック部やボビンの補強が中心ですが、塩梅ややり方が無限にあって、核心に近づいた様な、そうでもない様な、悶々とした日々が続いています。まぁそんなに簡単に出来るのなら、誰も苦労しませんが。(^^;

ところで、今週は久しぶりに素材展を見に幕張メッセ(写真↓)まで出かけてきました。

私は元々超ハイテク産業装置の開発業務をやっていたので、けっこう素材フェチです。スピーカーユニットの振動板を改良しようとすると、手間をかけるだけではなくて、高性能な特殊素材も物色したくなります。そこで、新しい材料の仕入れ先開拓を兼ねて、久しぶりに出かけた次第です。物凄い混雑で、すっかり疲れてしまいました。(笑)

今回は、カーボンファイバー関連を中心に物色して、いくつかの業者さんと名刺交換や情報交換をして来ました。

そこで今日は、カーボンファイバーの話題をしてみたいと思います。

以前から思っていたのですが、カーボンファイバーってそんなに高性能なんでしょうか? 既に当社の手作りユニットの素材としてお世話にはなっているのですが、実際に自分で弄ってみると、色々と問題点が見えてきます。

まずはカーボンファイバーの何たるかですが、とにかく軽くて硬いというのが特徴とされていますね。硬さ(引張弾性率)で言えば、超鋼合金並みを中心に、強度が低くて構わなければダイヤモンドに迫る硬さのグレードもあります。アルミやチタンといったお馴染みの金属はもとより、ベリリウムをも軽く凌駕する高性能です! 全てのスピーカーはこれで作れば完璧!!

ところがどっこい、ごく一部のスピーカーユニットでしか採用していません。特別に難しい理由がある訳ではありません。実際にはその様な性能は出ないのです・・・ってどうして?

この事は、カーボンファイバーの特長であると同時に欠点でもあるのですが、究極の異方性材料である点に注意が必要です。束ねた繊維に樹脂含侵をして固めると、繊維の方向には確かに非常に硬いのですが、繊維と異なる方向には、単なる樹脂の剛性しかありません。なので、良く使われるのは、縦横に繊維を編んだ平織りシートに樹脂含侵したタイプです。解りますか? この時点で断面積当たりの弾性率はざっと半分になります。それから、含侵樹脂の重量が約半分になりますので、結果としての剛性は更にその半分になります。その上、平織りシートの45度方向ではやはり剛性が非常に低くなってしまいます。等方性材料の様に使おうと思うと、カーボン繊維を色々な方向に組み合わせた不織布の様なカーボンシートもあるのですが、これに樹脂含侵をすると、まぁ、プラスチックに毛が生えた程度の剛性にしかなりません。はっきり言ってアルミ板にさえ勝てません!!

その様な訳で、「超硬合金の様に硬い素材です」と言いながら平織りのカーボンシートで作った振動板を自慢しているメーカーがあれば、それは事実上の詐欺です。カモにされないようにご注意あれ。

さて、では本当にカーボンファイバーはNGかと言えば、そうではないのです。上記で極端な異方性材料であると言いましたが、これが重要点です。異方性材料は、その特性を生かすように使わないと価値が出ません。カーボンファイバーを最も活かす使い方は棒状の構造物です。究極の用途は「釣り竿」とか「ゴルフクラブのシャフト」です。

え~っ、じゃあ振動板には無理? いえいえ、軽くて硬い特性は何としても活かしたいですよね。コーンに適用するとすれば、例えばコーンの放射方向に繊維を並べるといった方法が王道と思われます。言葉で言うのは簡単ですが、自動機で製作した平織りシートをプレスするのとはわけが違います。その様な(放射状)シートは存在しないので、手作業で放射状に並べてプレスする必要があります。過去にはコストをかけてやっていたメーカーもありましたが、今ではほとんど見かけません。

で、上の写真のコーンネック部の黒い物体は、放射状に繊維を並べたものです。センターキャップの様な物もありますが、これはいわゆる金属製のマスリングの様な、ボビンの円形を保つための補強を軽量に実現する機能を持たせています。しかし音の方はまだ納得しておらず、外周に向かって厚みが薄くなる様な工夫の物も作っているところです。

コーンネック部は、単純に厚く硬く作る事で、音がしっかりして来ますが、重量が増すと強いキャラクターが生じるデメリットも発生します。そこで、硬さと軽さを兼ね備えた究極の素材と構造形状を追求しているところです。

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